//合同会社GINGA 会議室ステラにて
– まずは3ヶ月間の研修期間、本当にお疲れ様。
– ありがとうございます。非常に濃密で、あっという間でした。
– 現場からの評価も高かったよ。彼ならすぐ実戦で戦えるって太鼓判を押されてる。というわけで、来週からシステム管理部の正社員として登用されることが決まりました。
– 本当ですか! ありがとうございます!
//紙の束を机に置く音
– うん。これからもよろしく。……ここからが本題なんだけど。来週からは、研修では扱わなかったような銀河ライブの深層にあたるシステムにも携わってもらうことになる。その前に、この書類に目を通してサインをお願いしたいんだ。
– ……NDAですか? 入社時にも書きましたよね?
– いや、入社時のものより遥かに厳しい特別なNDAだ。これから君が知る銀河ライブの根幹システムに関する内容は、他社はもちろん、家族や友人に口外することも一切禁じられている。……よく読んで、サインしてほしい。ゆっくりで構わないから。
//しばらく紙をめくる音
– サインしました。これで、ようやく本格的な開発チームに入れるんですね。
//契約書を受け取る音
– ……開発チームか。……君は、銀河ライブのあの異常なシステムを構築して、今も保守を続けている開発陣は……何人くらいの規模感だと考えている?
– え? そうですね……あの規模となると、最低でも数十人規模のエンジニアが張り付いているのかと。
– そうだよな。でも、違うんだよ。たった一人だ。しかも、そのシステムの全権を握り、アップデートから保守まですべてを行っているのは……君も知っているだろう、流星ことね本人なんだ。
– ……はい? いや、エイプリルフールはもう終わりましたよ。馬鹿にしないでください。ことねちゃんが宇宙から来たエンジニアってのは、あくまで「設定」ですよね?
– 私も最初はそう思っていた。だが、事実なんだ。彼女の生配信中のサーバー負荷や、トラフィックの変動ログを見てみるといい。彼女が配信でほんの少しだけ黙った瞬間、我々の手には負えないような高度なプログラムが、信じられない速度で書き換えられていく。我々がやっているのは、彼女が構築した完璧なシステムに、外側からデザインやガワを被せているだけなんだよ。
– そ、そんなバカな……。じゃあ、その流星ことねって、一体どこのどんな天才プログラマーなんですか? 会社にいるんですか?
– ……分からない。
– 分からないって……。いや、システム部のトップですよね?
– ああ。だが、私も彼女の顔を見たことはない。彼女がどこからアクセスして、どこで作業しているのか。彼女の正体を知っているのは、社長と、小鳥遊さんくらいだ。我々には、ただ彼女が作ったシステムと、バーチャル上の彼女のアバターしか見えていない。……小鳥遊さんいわく、彼女は「特別な星」らしい。本当に、彼女がただの天才プログラマーならいいんだがな。
//しばらく静寂が続く
– だから、この事実は絶対に外部には漏らせない。競合他社が聞けば、血眼になってその一人の天才を引き抜くか、あるいは物理的に潰しに来るだろう。我々は彼女を……システムそのものを守らなければならない。今日から君も「特別な星」を守るチームの一員だ。よろしく頼む。
– ……分かりました。
No.60/76
#流星ことね&天才 #特別な星 #銀河ライブ&天才