都内近郊に新たなプラネタリウム施設「小鳥遊(たかなし)天象儀」がオープンした。
最新鋭の光学式投影機と、全天周デジタル映像システムを融合させたこの施設は、息を呑むようなリアルな星空体験を提供すると、早くも話題を呼んでいる。
しかし、業界で最も注目を集めているのは、館長である小鳥遊氏の経歴と、その大胆な決断だ。彼はつい先日まで、最先端の映像技術とストリーミングシステムを手掛ける制作会社の代表取締役を務めていた人物である。同氏は社長在任中から私財を投じてこの施設の建設を進め、この春、無事に施設の施工完了を見届けると同時に突如として社長の座を退き、プラネタリウムの専業館長へと転身したのである。
ビジネスの第一線で成功を収めた彼が、なぜそこまでしてプラネタリウムの運営という道を選んだのか。
オープン直前の施設で、小鳥遊館長に話を聞いた。
ーー(テスト上映を終えて)本当に素晴らしい星空でした。
小鳥遊: ありがとうございます。私は大学時代から宇宙の映像を作るのが好きでして。いつか自分の理想の星空を投影できる場所を作りたいというのが、昔からの夢だったんです。
ーーそれにしても、施設の完成と同時に、順風満帆だったIT企業の社長の座をキッパリと退かれたことには驚きました。何か大きなキッカケがあったのでしょうか?
小鳥遊: ……そうですね。実は社長時代も、趣味で個人的な宇宙の電波観測やデータの研究をずっと続けていたんです。そんなある日、宇宙のノイズの中から、信じられないような未知のシグナル……私にとっての特別な星と巡り合うという、奇跡的な出来事がありました。
ーー特別な星、ですか。それは比喩表現でしょうか?
小鳥遊: ええ(笑)。その星は、遥か遠い場所からずっと地球を観察していて、私たちの文化……特にインターネットを通じた自己表現や、人々がリアルタイムで繋がる文化に、ものすごく強い興味と憧れを抱いていました。ただ、彼女にはこちら側で活動するための立場や居場所がなかった。だから私は、自分の会社の映像技術やシステムを総動員して、その星が地球の人々と交流するためのステージを作ろうと決心したんです。
ーーなるほど。ネットの海から、磨けば光る素晴らしい星(編集部注:人材の比喩)を発掘されたわけですね。
小鳥遊: ……はい。まさにその通りです。彼女の吸収力は凄まじく、今ではもう私が口を出すまでもなく、自分自身でシステムを拡張し、立派にあのステージを回していますよ。だから私は施設が完成したこのタイミングで、安心して退くことができたんです。
ーーご自身の集大成となるプロジェクトを後進に譲り、再びご自身の夢へ戻られたと。
小鳥遊: 彼女との……その「特別な星」との交流を経て、私の中で宇宙への興味がかつてないほどに膨れ上がったんです。宇宙は決して冷たくて空虚な暗闇ではなく、こんなにも豊かで、愛すべき存在がいるんだと。私はこれからも個人的な観測と研究を続けていきます。そしてこの「小鳥遊天象儀」を通じて、一人でも多くの人に、星空を身近に感じてほしい。私たちは決して宇宙で孤独ではないという真実を、伝えていきたいんです。
No.61/76
#小鳥遊&特別な星 #真実